本研究は、教育用説明生成AIエンジンEXAIT (Educational Explainable AI Tools) を構築するとともに、株式会社内田洋行、京都市教育委員会と連携し、ラーニングアナリティクスの学校現場への導入に取り組むものです。
2020年7月、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)による「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」に採択され、11月より、本格的に実証研究を開始します。

背景

文部科学省「GIGAスクール構想」にて児童・生徒一人一台の端末整備が加速しており、テスト等をコンピュータで実施するCBT (Computer Based Testing)も行われるなど、データを蓄積できる環境も整ってきたことから、そのデータを生かすために教育でのAI活用の研究も始まっています。
ただ、学校教育現場では、AIが解析したデータに学習者が納得できなければ、主体的な意欲を引き出せないという課題がありました。そのため本研究室と内田洋行は、単に問題が自動的に提示されるだけではなく、学習者がより納得して課題に取り組めたり、先生が児童生徒のつまずきを把握して適切な指導を行えるよう、より学習・指導に有効な分析データを導き出す「説明できるAI」の開発を行うほか、京都市教育委員会と連携してその実証研究を行うことを内容とする5か年計画を作成し、NEDOからの委託研究で採択されました。

概要

本研究室によって独自に開発したデジタル教材配信システム(e-Bookリーダー)のBookRollと分析ツールLA Viewで構成されるラーニングアナリティクスシステム「LEAFシステム」を基盤に、学習行動から説明生成を行うAIエンジン「EXAIT」を開発して搭載します。

LEAF情報基盤システムとEXAITエンジンのシステム構成

システムの効果測定は、京都市教育委員会と連携して学校現場で実証研究を行います。内田洋行が学校現場で学習者が利用しやすいシステム構築と学習データの管理・抽出を行い、共同でデータに基づく学習効果を検証します。実証研究は、2020年度内に京都市内の学校で開始予定です。

データ駆動型EXAITの研究開発

AIエンジン「EXAIT」は、学習行動について「モデル駆動」と「データ駆動」の両面から開発を進めます。
「モデル駆動」では、教材や知識マップをもとに学習者が解答プロセスについて自己説明を行うことで、次に学ぶべき事項や解くべき問題を理由とともに推薦します。「データ駆動」では、推薦やダッシュボードの学習ログを蓄積し、学習ログからボトムアップに説明を生成します。そして、「データ駆動」と「モデル駆動」を融合することにより、児童生徒の学習プロセスを理解して説明を生成し、学ぶべき事項を推薦するAIを開発します。

自己説明を用いたモデル駆動型EXAITの概要

研究助成

  • 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」
  • 「説明でき るAI の基盤技術開発/学習者の自己説明とAI の説明生成の共進化に よる教育学習支援環境EXAIT の研究開発」
  • 2020 年7 月 ~ 2022 年2 月